23/7/2002

仕事場からの帰り路、レンヌ通りのゆるい坂を下っていたら、向こうからやってきた少しくたびれた感じの年輩のご婦人に話しかけられた。道を尋かれるのかと思ったら違った。
「あなた方、フランス語話しますか?」
「ええまぁ、多少」
「本は読みます?」
「フランス語では、読みませんねぇ」 実際、ウェブサイトと雑誌くらいだし。
「これ、あげます」
そう言ってご婦人は手に持っていた本がたくさん入った紙袋を僕に渡した。ちょっとびっくりしたけど、彼女が運ぶには重たそうだったので受け取りお礼を言った。
「要らなかったらお友達にでもあげちゃってください」
「こんなに?ありがとうございます」
「どういたしまして。ところであなた方は中国人?」
「いいえ、日本人ですが」
「ああそうでしたか。ではご機嫌よう」
「よい晩を」
別れ際は重荷から解放され心無しか少し元気になったように見えたご婦人。この間約15秒。紙袋を覗いてみると、新しい本や少し古い本、音声学や民俗学、小説等にまじってまっ先に目についたのが僕の好きなカルロス・カスタネダの本。珍しいこともあるものだ。とりあえず殺風景だったうちの本棚が少し賑わった。さて、これらの本を読み終わり誰か次の人に15秒で手渡せる日は来るのだろうか。

  

Comments (0) パリ Tags: — Kyo ICHIDA @ 2002/07/23 23:21