子供の頃、交通事故に遭って集中治療室に入っていたときのこと。
両脚はあちこち骨折、右腕は皮一枚でかろうじて繋がっている状態で、
無事だった左手にも点滴や血圧計が繋がっていて両手が使えず本も読めないので、
イヤホンを片耳に入れてもらってラジオを聴くことで絶え間ない痛みから気を紛らわすしかなかった。
ちょうどそのときヒットチャートの1位だったのがクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』。
イントロのアカペラのハーモニーから印象的なピアノ、当時はまだ名前も知らなかったあのフレディの歌声に魅了され、
ああ、なんて美しい良い曲なんだろう……とうっとり。
まるで苦しみの中で遠くにわずかに灯る希望の光のようで、
毎日この曲が流れてくるのが楽しみだった。
でもAMラジオ番組だったからか、フルコーラスで流れることは一度も無くて。
ギターソロに行くか行かないかのうちにフェードアウトされてしまい、数日後にはイントロが省かれ、曲紹介が日に日に短くなっていき…
ついにはスウィートの『アクション』に1位の座を奪われてかからなくなってしまった。
なので、大好きなのに一度も全部を聴いたことのないままになってしまったのだった。
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