ええまぁ、またもこんな話なんですが。
中学生の頃のとある日曜日、久しぶりに会う父が作業場へ連れて行ってくれたことがありました。
休日で誰もいない広い空間に、YMOメンバーを模した身長40センチくらいの人形が300体、未着色の狀態で並べられており、
「これ塗んなきゃいけないのが大変なんだよ」と言いながら父はちょっと可笑しそうに笑いました。
YMOの大ファンだった僕は内心。oO(あんまり似てないな…)と思ったものの口には出さず、
「撮影が終わったらひと組もらえる?」とダメ元で訊いてみました。
「スポンサーが抽選でプレゼントにするらしいよ」
「じゃあ、ぼくも応募する」
それから暫くして、完成したフジカセットのポスターを当時よく行っていた秋葉原ラジオ会館で見かけたときは、最初あんまり似てないと思ったもののやっぱりちょっと嬉しかったのを覚えています。野球のグラウンドに300人のYMOメンバーが並んでいるというポスターでした。
そのビジュアルはYMOのアルバム『増殖』にも使われ、以後このフィギュアは増殖人形と呼ばれるように。
抽選の募集はいつ始まるのか待っていたら、プレゼント企画は「いぢめられたらイヤだから…」というYMOメンバーの要望で中止となったそうで、そのおかげでほどなくして我が家にやって来た増殖人形は見かけよりもかなり重く、音楽部屋に鎮座して僕らの下手なバンド練習を見守る守護神となったのでした。
何しろウチに初めて来る友だちはみんな増殖人形に驚き、羨ましがってくれるので密かな自慢でもあったのです。それは人形そのものというよりもプチ父自慢だったのかもしれません。
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