ペヨーテ
そう、本来は約1年間瓢箪で乾燥させきざみを吸うのだが経口摂取する場合は5個くらい要るそうだ(ただし激しい吐き気と腹痛を伴うらしい)。めげずにお金を払って鉢植えを受け取り、立ち去ろうとする春田くんに件のおじさんとどめのひとこと「食べちゃわないで育ててね〜」
重い腰を上げて10年ぶりのパリにやって来て早2ヶ月。今や、やがて帰国することを自分に言い聞かせるのに苦労する。東京にいたときは天気のことなど気にもとめない生活をしていたけど、ここでは晴れると無性に出掛けたくなる。夏の太陽を惜しむこの街の住人達につられてしまうよう。そういう点では仕事に向かない街かも。
フランス北部にある海辺の保養地ベルクに行ったときのこと。砂浜がとても広く美しい海岸に臨むこの小さな町に小さな移動サーカス団が来たのでついつい観に行ってみた。ショーが始まる前、テント傍の広場に何頭かのラクダやロバがいて子供達が群がっている。見るとラクダ達の前脚のヒザの皮がみな破れ、傷ついていて痛々しい。後でその理由が判った。このサーカスは広い駐車場スペースにテントを張っているので地面はアスファルトなんだけど、ショーのなかでラクダ達はこの硬い地面にヒザをつかされるのだ。ショーの度にこれではなかなか傷は治らないだろう。結局、期待していたピエロのコスチュームもへなちょこで、辛い労働を強いられているラクダ達だけが印象に残ってしまった。
「サーカスどうだった?」と友人に聞かれ、「一流にはほど遠いけど、まぁ、楽しめたよ」と一応答えると、この友人は笑って「ベルクには一流のサーカス団は来ないよ!」・・・それもそうか。
パリに戻ってすぐ、たまたまテレビでサーカスをやっていた。さすがにテレビ放送されるだけあって、規模も大きいしコスチュームも美しく、ショーも洗練されている。そこへラクダ達が登場し、ピエロを乗せるためにヒザをついた。思わずベルクで会ったラクダ達を思い出し注目すると、なんとこのサーカス団では地面にしっかり砂が敷かれていたのだ! なるほど、これが一流と三流の違いというものか。やっぱり一流がいいよね。
いぬは三日の恩は忘れない、ねこは三日で恩を忘れるというけどそんなことはない。恩着せがましい態度を潔しとせず無償の愛を尊ぶ彼等は、覚えていても無視するのだ。それがねこを、しがらみにとらわれない軽やかな生きものしているにちがいない。
パリ祭の夕方、サンジェルマン通りにある LE SOLFERINO というカフェでショコラをちびちび飲みながら今後作るキャラクターアニメのことをぼんやりと考えていたら目の前の路で車と車がぶつかった。
これは「当たる」かも?