31/3/2012

佐渡裕さんユネスコ・コンサートUSTREAM覚え書き その4 設定編

短くまとめるつもりでかなり端折っているにもかかわらず長くなってしまいましたが、つまずいたり調べた要所をなるべくおさえておきたいと思います。

3月6日(火)
朝からCanon Franceさんに機材をお借りしに。業務用ビデオカメラ XF105を3台、5D Mark IIにレンズ各種等、総額23,241ユーロ(約250万円)分の機材で緊張します。
その足でUNESCOへ行き協力してくださるビデアストさん達と顔合せ。当日はNHKを始め各局の報道カメラも入るので撮影チームが段取りを打ち合わせる間、前回難航したネット設定が問題なく適用されることを確認しました。
回線確保のために古川さんがされた苦労に比べれば、交渉に応じて何とかしてくれる相手が居るのですから非常に恵まれています。
これはなんとしても成功させて、多くの方に様々な意味でご恩返ししなくては!

佐渡さんの、世界中のなるべく沢山の方にこのコンサートを観てほしいというご要望を少しでもアシストするべく、特設サイトfacebookでの告知に加え、Ustream Help CenterのA Word on Bannersを参照しておすすめバナーを日本語と英語で作成し送りました。

3月10日(土)
そしていよいよ本番前日。ここまで長い道のりでしたが逆に言えばあと1日しかありません。

plan-ustream-1

接続
中継を観てくれる人達に対して1カメだけの固定映像では変化が乏しく退屈ではないだろうか?という思いから、2台目のカメラを繋ぐことに。また、3カメにCerevo LiveShellを付けて別チャンネル用バックアップとしました。

1カメ
SCHOEPS コンデンサーマイク+マイクプリ → PA → XLR分配機 → XF105 → ADVC-HD50 → Core i7 MacBook Pro FireWire端子

2カメ
XF105 → HDMI延長器 → イーサネットケーブル (カテゴリー6) 30m 2本 → HDMI延長器 → HDMI–アナログ (S端子&コンポジット) コンバーター → KEIAN BD MAKER K-BD MAKER → Core i7 MacBook Pro USB2.0端子

トラブルにも対処しやすいよう基本的にシンプル・イズ・ベストを目指しましたが、2カメは経由する機器がどうしても多くなってしまいました。*1

ソフトウェア
ドライバー不要のFireWire接続で認識される1カメに対し、2カメはEmpia capture → Cam Twist → Ustream Producer とルーティングする必要がありました。
1. Empia capture
2. Cam Twist
3. Ustream Producer
の順番で起動する必要があります。設定を変更する場合は逆の順番で終了してやり直します。
また、キャプチャソフト、Cam Twist共にプレビュー画面を閉じておかないとUstream Producerに映像が出ません。

結果、同じビデオカメラ・同じホワイトバランス(5200K)にもかかわらず画質に大きな差が出てしまいました。当然と言えば当然なのですが、アナログ接続の映像はどうしても見劣りします。テスト配信を見ていたジャポネードメンバーからも画質の差が気になるとの指摘が。*2
また、Empia captureやCam Twistのプレビューでは走査線が見えないプログレッシブ表示なのにもかかわらず、Ustream Producerを通すとどうしても走査線が目立ってしまい、デバイスのデインターレース設定等いろいろ試すも解決できませんでした。Empia captureやCam Twistで高解像度に設定してもみましたが、そうするとUstream Producerに入る絵が欠けてしまい、結局640×480ピクセルにせざるを得ませんでした。

ここで迷いが。
2カメはプロのビデアストが操作していることに加え、Ecole Normaleでバイオリンを学ぶJAPONAIDEメンバーが、次にどのパートを写せばいいかのリストを作ってアシストしています。
これは2カメをFireWire接続にした方がいいのではないか?
そこで固定カメラと舞台上手2カメの接続方法を入れ替えることも検討したのですが、ADVC-HD50が30m延長したHDMIを嫌がること(HDMIエクステンダーが電源不要タイプであるためかもしれません)とXLRケーブルが中央固定カメラの位置でしか使えず、音声をアナログ接続にするのは勿体ないのでやはり当初のシンプルなほぼ1カメ案に戻すことに。絵はついでとまでは言いませんが、音質優先という点はブレるわけにいきません。
結局HDVとアナログを同等に見せるのは厳しいと判断し、本番ではPicture in Pictureとして見せることにしました。

Ustream Producer設定のポイント

音声
コンサートの場合カメラが切り替わる度に音質も変わってしまうと聴きづらいので、あらかじめ全てのカメラにメインのサウンドを割り当てておきます。
今回の場合はUSTでのナレーションやiTunesの音源は必要ないので定番であるSoundflowerやLadioCastは使わず、卓からXLRで繋いでいるHDVカメラの音声*3を2カメや必要な静止画等に割り当てました。
具体的には追加したショットを選択した状態で、スピーカーアイコンのプルダウンメニューから割り当てたいサウンドを選択します。

複数画面のテンプレート
Picture in Picture等あらかじめ使用するソースを割り当てておくと便利です。それをしておかないとソース未割り当てを表すアルファベットが配信画面に表示されてしまう場合があるので、『オートライブ』はオフにしておく方がいいかもしれません。

設定を保存しておいてもUstream Producerを次回起動した際、カメラの認識が飛んでしまっている場合があるので要注意です。それが原因でPinPと音声で一度ずつドジってしまいました。orz

カメラプレビュー
複数カメラを切り替える際、各カメラが今どんな画を撮っているのか確認するのに便利です。
『ウィンドウ』メニューから『カメラプレビュー』で呼び出すのですが、次期バージョンでは是非ショートカットを割り当ててほしいです。

ビデオショット
放送中に動画ファイルを流す場合、初期設定ではビデオがループになっています。ビデオが終わったら繰り返さず止めたいときは下記のように設定しておきます。
『編集』メニュー から『ショットの編集』を選択
スピーカーアイコンをクリックし、『終了時の処理』を変更します。

ustream movie setting

 
配信ビットレート
帯域に余裕があるためやろうと思えばHD配信も可能でしたが、観てくださる方の様々な環境も考慮する必要がありました。
多言語ソフトの制作でいつも悩まされるのが世界ではまだまだ低スペックの古いPCを使っている方が多いことで、ビデオを組み込む場合1300kbpsになると脱落するPCが多いようです。下りの通信速度も考慮した結果、欲張り過ぎず1000kbps程度を上限に決めました。
音声は44.1kHz 144kbpsに上げ、逆にフレームレートは割りきって秒15フレームに落としました。

ustream encoder preset

 
“Unregistered HDV”を消すには
FirewireにHDVカメラを繋ぐとUstream Producer上で”Unregistered HDV”という透かし文字が画面に出てしまう場合は、HDVカメラのサポートオプションを購入する必要があります。Proバージョンに$99で追加可能、Ustream Producer Studioではあらかじめ搭載されているとのこと。
しつこく表示される広告といい、Ustreamはなかなか商売上手ですよね。無料版ではマルチカメラが使えない所なんかもある意味関心させられます。^^;

それにしても今回遠征してくれたスーパーキッズ・オーケストラにはハートを鷲掴まれました。演奏が猛烈に素晴らしいのももちろんですが、とても礼儀正しくてキッズだけれども凄くプロフェッショナル!佐渡さんは校長先生のようです。
「深刻にならずに、真剣に!」
的確な指導で子供たちが紡ぎ出す音が変化していきます。佐渡さんのような先生に教えて貰えたら幸せだろうなぁと想像してしまいました。どう頑張っても入れませんが。^^;;
そしてレコーディングのために滞在するベルリンから駆けつけてくださった辻井伸行さんのリハーサル!
このとき、翌日の準備でスタッフやテレビ関係者等大勢が立ち働いておりややざわついていたのですが、彼のピアノの音色に思わず作業の手が止まりました…。
普段見ることのできないリハーサルを見学できて幸運でした。*4

リハーサル

 
すると古川さんがリハーサルのテスト中継を見てくださっていました!

リハーサル視てますよ。音質とても良い! 映像は、照明のせいで少し赤カブリしているけれど、それでホワイトバランス調整すると、後でスポット当てた時に変な色になるので、そのままで良いでしょう!

古川さんに音質が良いと言っていただくほど嬉しいことはないので凄く勇気づけられました!
世界に感謝を伝えるためにUストがしたいと思ったものの、実質経験ゼロでどうにかここまでこぎつけられたのは古川さんのおかげです。
試行錯誤の連続でいくら準備しても時間が足りないくらいでしたが、何とかしてこの素晴らしい音楽を少しでも良い音で伝えるお手伝いがしたい一心でした。

がっ、本番では更に容赦のないハプニングが襲うのでした…。

その5 本番編へ
 

1) 一見するとビデオミキサーを使えば良いようにも思われますが、現在Uストやニコ生用に販売されている廉価なビデオミキサーの多くがコンポジット接続なため、どうしてもある程度ねむい画質になってしまいます。
ケーブルを長く延ばせるHD-SDI接続が可能なビデオミキサーはまだまだ非常に高価ですよね。HDMI入力が複数あるThunderboltインターフェースを発売して欲しいです。
考えられる解決策:古川さんに教えていただいたBlackmagic design Intensity Extremeがあれば!思いきや、誰もThunderboltとFireWire両搭載モデルを持っていないということに気づきました。
現時点でまだ発売前ですがUSB2.0からハイビジョン入力可能なMonsterX Live for Macがあればカメラ2台をHD画質で接続出来ることでしょう。

2) Cam Twistでもある程度は画質調整可能です。

3) 音声に関しても古川さんから事前に貴重なアドバイスをいただいていました。

もし、会場のPAからライン出しでもらうのであれば、+4dbのキャノンXLRは、オス/メスどちらで来るか(米国型と欧州型とオスメスが逆で、極性も逆です)

米国と欧州で逆だとは想像もしませんでした!
問い合わせると、ユネスコ側はXLRオス、こちらの器具につなぐのはメスタイプとの回答。こちらが持ち込むビデオカメラは同じヨーロッパ仕様なので問題なしと判断し、事なきを得ました。なかなか知りえない情報をどうもありがとうございました。

4) しかもリハーサル終了後、佐渡さんが中継班の作業するバルコニーにわざわざ声をかけに上がってきてくださりお心遣いに感激しました!
佐渡さんと古川さんが初めて出会われた時、佐渡さんのマネージャーさんも同席されていたそうで、しばし思い出話に花が咲きました。
「古川さんにどうぞくれぐれも宜しくお伝えください」とお言葉いただきました。