夏休みの自由研究ということで、360°パノラマVR動画を撮ってみました。
ツール・ド・フランス最終日でお馴染みのコースを交通量の少ない夏の日曜早朝に一周。
天井から怪しい棒をにょきっと出して走ってたもんで途中でパトカーと並んじゃってちょっとドキっとしました。
チュイルリー公園, コンコルド広場, シャンゼリゼ通り, 凱旋門を周るヴァーチャルドライブを、前田智洋くんの”Loop City”をBGMにお楽しみください。
ちなみにこの動画はループしてるんですが、YouTubeのHTML5プレーヤーでは画面右クリックで「ループ」を設定できます。
さてここからが本題です。撮影してみてわかったことや高画質化への課題など。
再生環境がまだ限られる
PCの場合だと、現時点ではSafariやInternet ExplorerはYouTubeの360°表示に対応していません。
Google ChromeまたはFirefoxで、ということになります。
facebookにパノラマ動画をアップしてスマートフォンで見るのが最も手軽でしょう。
YouTubeにアップした場合はiPhone版Safariではダメで、上下前後左右見たい方向を見るにはYouTubeアプリを使う必要があります。何故なんだQTVRのアップル!
撮影機材について
この動画はRICOH THETA Sで撮影してFinal Cut Proで速度調整しています。
THETAは誰でも手軽に360°VR撮影できる画期的なコンセプトのカメラで、かつてルーヴル美術館ヴァーチャルツアーの撮影では1箇所につき最低8枚は撮影しなければならなかったことを考えると「当時このようなカメラがあれば…」と呻かずにいられません。
ではこのカメラがあれば、仕事に使えるクオリティの撮影が可能でしょうか?
答えは静止画ならISO100でマニュアル撮影するなど撮り方によってはまぁYES、動画に関しては残念ながらNOです。
VRには解像度が必要
RICOH THETA シリーズで撮影されたオリジナル動画は下図のようになっており、まずは極座標から直交座標に変換する必要があります。
この時点で1080p(実質的には960p)で16メガビット/秒程度しかないmp4形式のオリジナル動画から、1920✕960ピクセルのmp4に変換・再圧縮されるため、画質がかなり劣化します。
なぜ960pかというと、元の解像度1080pの横幅が1920ピクセルであり、めいっぱいの大きさの正円2つを並べて収めると2:1の縦横比、つまり1920:960となり、下120ピクセルは使えないためです。
円の周囲の黒い部分も画像情報として寄与しない画素で、その分通常の動画に比べて少ない情報量を座標変換で引き伸ばしていることになります。
しかもVRでは一部を拡大表示して見回すような形になるため、どうしても解像感が失われがちなんですよね。
そして編集するとなると更にもう一回圧縮を加えることになってしまいます。
ちなみに今回の動画では信号待ちから発進するときのGの影響を受けないように、そして影響があるかはわかりませんが少しでもピクセル変換が少なくなるように、直交座標への変換時に天頂補正をOFFにしています。
それなら4Kのパノラマカメラはどうか?
ちょうど今月末にNikonからKeyMission 360という似た構造の4KウルトラHD動画が撮影可能なパノラマカメラが発売になります。
この製品は撮像素子はやや意外にもTHETA Sと同じ1/2.3 CMOSですが有効画素数はおよそ倍、レンズも大きそう*ですし、GoProのようなアクションカメラという位置づけなので動画撮影性能に期待できそうです。
*大きく見えたのはレンズカバーで、KeyMission360のレンズそのものの大きさはTHETAとあまり変わりませんでした。
画質を2160s 4Kにするとさすがに重いしステッチがやや目立つのが気になりますが解像感はいいですね。これは是非買って試してみたいと思います。
もうひとつの可能性、RAWで撮って編集は可能か?
極座標から直交座標への変換に加え、編集を加えるとなると更に画質が劣化することになります。
少しでも画質劣化を防ぐために、THETA Sに装備されているライブ中継用HDMI端子を使って高画質で録画するワークフローを検討してみましょう。
この端子にBlackmagic Design ポータブルディスクレコーダー HyperDeck ShuttleやATOMOS Ninja Starのような外部レコーダーを接続することで非圧縮QuickTime、Apple ProRes 422等で録画したらどうでしょう?
THETA S本体で撮影した場合は約16メガビット/秒なのに対しApple ProRes HQなら220メガビット/秒ですからデータの大きさは比べものになりません。かなり劣化の少ない映像が録れるのではないでしょうか。
一見いい方法な気がするのですが、実はちょっと問題があるんですよね…。
RICOH THETAのソフトウェアがmp4動画しか変換しないのです。
編集した動画をYouTubeにアップする前に360度再生を有効にするためのメタデータを追加するアプリ Spatial Media Metadata Injector もmp4しか認識しません。う〜ん…。
結論:やっぱり4K!
いっそ極座標から直交座標に変換する工程をAfter Effectsで独自に行うとか…しかしながら解像度不足の解決にはなりませんし、何よりせっかくのコンパクトなカメラに外付け機器を繋いで使うとなるとアクションカメラとしては残念なんですよね。
これらの手間や費用面などデメリットを勘案すると、結論としては4Kのカメラを使う方がメリットが大きそうです。
本家リコーも来年あたりきっと4Kに対応したTHETAを出してくれることでしょう。というか出してくださいね!?
日曜早朝のParisは、きれいで、Paris じゃないみたいね。その後は・・・ギャー ! 理解不可能。お帰りなのね。お気をつけて・・・私は加齢という病にかかっています。
加齢が病なのであれば、こちらはさしずめ貧乏症という症状に苦しんでいると申せましょう。