ツイッターで知ったのですが、『オールド・ブラウン・シュー』のドラムはポールが叩いているという説があるそうです。
えっ!
映画『マジック・クリスチャン』撮影のため、リンゴはレコーディングに不参加だった、というのです。
この話の出どころは『Abbey Road 50th Anniversary Super Deluxe』に封入された冊子だそうです。
一方、他の複数のビートルズ本ではこの曲のドラムはリンゴとされています。
はたしてどちらが本当なのでしょうか?
シングル盤『ジョンとヨーコのバラード』はジョンとポールの二人だけで録音されているのは有名な話ですよね。
ドラムはポールが叩いています。
それで、このシングルのB面『オールド・ブラウン・シュー』は対抗してジョージとリンゴだけで録った、という珍説まであるそうな。さすがにそれは「そうだったら面白いよね」というネタでしょう。
ポールのドラミングといえば、一番の驚きはやはり『ディア・プルーデンス』。
https://www.rittor-music.co.jp/s/beatles/page02.html
ドラムをとちったのをポールにからかわれてキレたリンゴはスタジオから出奔。
しかしリンゴ不在にもかかわらず、こんなドラマー顔負けの傑作をレコーディングされた日にゃあ、リンゴもド焦ったのではないでしょうか。
それにしてもポールはいったい何なの!?
ビートルズ唯一の16ビートであり、特に最後の方の連続フィルインの盛り上がりは凄くカッコいい!
なんだ天才か。
ビートルズのカバーバンドをしていた頃、この曲のドラムを叩くのが大好きでした。
もしかしたらビートルズで一番叩くのが楽しい曲だったかも。
だからなおさら、実はポールが叩いていたことに驚くとともに、天才ポールの凄さを改めて実感しました。
ですが『オールド・ブラウン・シュー』のドラムとなると、さすがにポールが叩いているとは信じ難いんですよね。
以下に理由を挙げます。
まずこの曲はシャッフルというブルース起源のリズムパターンで、一拍が三連符で分割されています。
簡単に言うとハネた感じのリズムで、これは非ドラマーには8ビートに比べて難易度が高いです。
しかもスカのフィーリングも取り入れた応用編。軽快なテンポでとても手慣れた感じの余裕のあるドラミングです。
特に
If I grow up I’ll be a singer
や
I may appear to be imperfect
の歌詞で始まるBメロ部分は、通常だったらハイハットで刻むシャッフルのリズムをバスドラムで難なく踏んでいて、とても玄人っぽい。
そしてBメロの終わり、
Who knows, baby, you may comfort me
の直後、ユニゾンでスネアとフロアタムをダダダダダダダダダダッと叩くフィルインはリンゴがよくやるパターンです。
本職ドラマーではないけれど、ある程度ドラムも叩けるというポールのようなミュージシャンの演奏にはある共通した特徴があります。
リズムがやや硬くなりがちなのです。
この特徴は『ジョンとヨーコのバラード』や『ディア・プルーデンス』の16ビート部分に顕著です。
『オールド・ブラウン・シュー』ではそのような硬さが感じられません。
そして極めつけは曲の出だし、ドラムの入る部分。
LRRLR(左右右左クラッシュ)
で右手で2回タムを叩いています。
これはパラディドルという基本的な奏法なのでドラマーなら練習しますが、非ドラマーにはまず縁がないテクニックと言っていいでしょう。
つまりもしポールが叩いていればもっと違ったフィルインのイントロになっていた可能性が高いでしょう。
前述のポールがドラムを叩いた2曲に加え、『バック・イン・ザ・U.S.S.R』でも基本的に全て左右の手が交互のシンプルなシングルストロークのフィルインです。
以上のことから、『オールド・ブラウン・シュー』のドラムはリンゴが叩いていると考えています。
もちろん実際のところはわかりません。
ですが「アー問題」と同様、レコーディングから50年以上が経っても議論が続いていることがビートルズらしくて凄いですし、想像をかきたてられる伝説ですよね。