この小説のことは河内タカさんが紹介されていて知りました。
1965年生まれの美術家、会田誠が書いた純粋な小説「げいさい」を一気に読んだ。
そう、約300ページもあるのに一気に読みたくなるほどとにかく面白いのだ。その文章のキレの良さと登場人物像たちの会話のやりとりのテンポが心地い…
河内 タカさんの投稿 2020年8月13日木曜日
著者が同い年なこともあって興味を持ち、すぐに買って読みました。
1986年11月2日の多摩美術大学の学園祭を舞台にした夕方から明け方までの話なのですが、日付が具体的なために気づいたことがあります。
このとき武蔵野美術大学空間演出デザイン学科の2年生だったぼくは、この同じ日の夜、後述する事情でタマビの芸祭にいたのでした。
そんな同時代性があり自分もどっぷりと浸かっていた界隈を描いた話が面白くないわけがありません。
美術に関わりのない人でも楽しめる青春小説ですが、やはり美術予備校経験者には「あるある!」と声を出さずにいられないことばかりです。
感想に関してはタカさんがこの上なく簡潔で全面的に賛同するしかないものを書かれているので付け加えることはありませんが、埋もれていた記憶をかつてないほど呼び覚まされたので、この機に『げいさい』を読んで思い出した芸大・美大受験体験を振り返ってみたいと思います。
ただ、とても個人的な話なので『げいさい』を読む方が有意義なのは間違いないです。『げいさい』は変なタイトルだと思ったけれど、読んだら誰かに話したり書いたりせずにいられない不思議な力のある傑作でした。
中学生、母に油絵を却下される
ぼくが東京芸術大学デザイン科のことを知って入りたいと思ったのは中一のときです。
理由は先ず第一に、家から近いからでした。
身体が不自由なためにあちこち入学を断られてやっと入れてもらった文京二中で美術部に入ったぼくは、
「美術部に入ったから油絵具買ってくれる?」
と頼んだところ、母から即座に、
「油絵なんて食えないからダメ」
と却下され、リキテックス(アクリル絵の具)を渡されました。
「え〜?なにこれ…」
「油絵具より速く乾くのよ」
「……(それは、いいかも…)」
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