7月4日火曜日午後1時、晴れ。迎えに来てくれたリフト付きタクシーにぼくは車椅子ごと乗り込んだ。清瀬で入院している中学時代からの親友を見舞うためだ。コロナ対策としての渡航制限がなくなり3年半ぶりのこの里帰りで、どうしても実現したかったことだった。
親友Tが脳出血で倒れたのは5年も前のことだったらしい。余命数日という状態から手術で一命をとりとめたが、右脳がダメージを受けており左半身付随になってしまった。
そんなことになっているとはつゆ知らず、しかしいくらメッセージを送っても既読にならないので仲間内のSNSで呼びかけたところ、元バンド仲間のSくんが家に電話をかけてくれて事態が発覚したときには、倒れてから既に3年もの月日が経過していた。ご家族もいろいろ受け止めきれず、誰にも知らせていなかったそうだ。
以来、施設を転々としながらずっと入院しているのだった。
(何でこんなことになったんだろう…可哀想に…)
車の窓から通りを眺める。暑さのせいか、通りに人がとても少ない。
清瀬までは1時間以上はかかる。車に揺られながら、これまでのことをボンヤリと思い出していた。