ヘミングウェイの『老人と海』で老漁師が何日も巨大カジキと格闘しながら、空腹を癒すため片手でさばいた生魚を食べて「せめてライムがあればな…」とか呟く部分。欧米の読者は「生魚を食べなきゃならないなんて恐ろしい!可哀そう」みたいに思っただろうけど、「サンチャゴ爺さんに醤油をあげたいっ」と熱望したのは僕だけではないはず。
ペンギン効果
うちの冷蔵庫の冷えがイマイチなのは、冷蔵庫にペンギンを乗せてよく冷えますようにとおまじないしていないためだと気付き、その辺に捨ててあったペンギンを連れて帰った。
翌日、野菜が凍っちまった。
本
仕事場からの帰り路、レンヌ通りのゆるい坂を下っていたら、向こうからやってきた少しくたびれた感じの年輩のご婦人に話しかけられた。道を尋かれるのかと思ったら違った。
「あなた方、フランス語話しますか?」
「ええまぁ、多少」
「本は読みます?」
「フランス語では、読みませんねぇ」 実際、ウェブサイトと雑誌くらいだし。
「これ、あげます」
そう言ってご婦人は手に持っていた本がたくさん入った紙袋を僕に渡した。ちょっとびっくりしたけど、彼女が運ぶには重たそうだったので受け取りお礼を言った。
「要らなかったらお友達にでもあげちゃってください」
「こんなに?ありがとうございます」
「どういたしまして。ところであなた方は中国人?」
「いいえ、日本人ですが」
「ああそうでしたか。ではご機嫌よう」
「よい晩を」
別れ際は重荷から解放され心無しか少し元気になったように見えたご婦人。この間約15秒。紙袋を覗いてみると、新しい本や少し古い本、音声学や民俗学、小説等にまじってまっ先に目についたのが僕の好きなカルロス・カスタネダの本。珍しいこともあるものだ。とりあえず殺風景だったうちの本棚が少し賑わった。さて、これらの本を読み終わり誰か次の人に15秒で手渡せる日は来るのだろうか。
誤審杯
パリ市清掃局のデフィレ
テレビでワールドカップの3位決定戦を見ていたら何やら表が騒がしくなってきた。大通りに出てみるとゲイ・プライド(この呼称はもう使わないとか小耳にはさんだけど)の日だった。ゲイの大行進。一般車両を完全に通行止めにして、サウンドシステムを積んだ何十台(何百台?)もの大型トラックが、街をディスコにする勢いの大音響で音楽を鳴らしながら紙吹雪の舞う中を徐行していく。お馴染みのド派手なコスチュームをまとったドラッグクイーンたちや様々なコミュニティーに属するゲイたち(中には警察や鉄道職員とかの同性愛者グループの山車もあった)のパレードは見ていて楽しい。もちろん見た目のお祭り騒ぎばかりでなく、ビラや看板で各々の主張を訴えるグループがほとんど。そういえば選挙前にゲイであることをカミングアウトしたことでも有名なパリ市長のドゥラノエ氏も毎年参加しているそうだ。
パリでマニフェスタシオンは珍しくないけど、これだけ大規模なイベントが街のまん中を縦断していくのだからそれはもうたいへんな大騒ぎ! 通りは紙吹雪だらけで凄いことに。どさくさに紛れて屋台も出てるし。去年は見物人もあわせると50万人参加したそうだが今年はもっと多いかもしれない。オーガナイズする方もさぞたいへんだろう。東京ではまず許可されないに違いない。
見物してるうちに、行列の最後はどうなっているのだろう?という興味が湧く。目の前を全てのトラックが通過するのに3時間以上かかった。いちばん最後にやって来たのは?・・・なんと40台余りのパリ市の清掃車両! どんどん道路を掃除しながらしんがりを務める様はあっぱれでした。