昨晩にひきつづきわびすけの体調が良くないので大事を取って今日は外出を控えることに。Samさんから電話をいただく。
「大丈夫? 何か食事を届けようか?」
「あ、大丈夫です、ではルームサービスとらさせていただきます」
「後でロドから連絡いくから」
「ご心配おかけしてすみません、いろいろありがとうございます」
というわけでルームサービスを頼むことに。考えてみたら今までの人生でルームサービスって頼んだことがない。ルームなサービスが存在するようなホテルに泊まったことがないもので。半端な時間だったけれど24時間オーダー可能というアメリカン・ブレックファストを頼む。
卵の焼き方に始まりベーコンかソーセージか、パンの種類、コーヒーか紅茶か、ジュースは何がいいか等々、まるで英語の試験を受けているような気分で膨大な量の尋問に耐えてしてしばし待つと豪華な朝食が運ばれてきた。ジャムの小瓶が何種類もあるというだけでテンションUP♪ マーマレードを食べたのいつぶりだろう。それにしても朝食のはずなのにかなりのボリューム。フランスの簡素な朝食とは対照的だ。朝からこれを食べるとなると、やはり一般的にアメリカ人が大柄でフランス人が小柄なのが納得できる。[註1]
その後はメール書きに追われて過ごす。今日は舟橋さんも仕事に追われてホテルに缶詰め状態だったそうだ。
午後Chipからメールの返事が届く。今日はChipがラスベガスに来るかもしれない日だった。実は3日前にLAで再会した晩にSamさんからNABの話を聞いたChipが興味を持ったこともあり、ラスベガスに会いに来たいと言っていたのだ。
"flying in tonight, I arrive Around 7:30, I'll call you when I get there."
Chipはブラックジャックがいちばん好きなゲームだと言っていた。そういうことならとネットでブラックジャックのセオリーを研究。なにしろ白黒マック時代のゲームでしかやったことがない。一日中テレビで流れているカジノでの遊び方解説ビデオも参考になった。
夕方ロドさんから電話が。
「その後どう?今晩どうする?」
今日もSamさんはビジネスがあり別行動だ。Chipが来れることになった旨伝えると、じゃあ今晩は皆別行動でということに。
ベルの音とともにストロボが光る。この部屋は聴覚障害にも配慮して電話やドアベルが鳴るとフラッシュが点滅するのだ。Chip満面の笑みで登場。今日ChipはCMの仕事があったのだが、朝早く始まった撮影は運良く少ないテイクで終わったのだそうだ。何でもコンピュータのディスプレイを眺めながらひたすらスナックを食べる役だったらしい。スナックしか食べていないんじゃあと、わびすけと3人で夕食をとりにフォーラム・ショップスに降りる。
どこにするかレストランを物色。人気のイタリアン SPAGOにしようということに。15分の待ちだけどお喋りをしているとあっという間だ。
食事しながら話は自然とパリ留学時代の想い出話に。
「あの頃のことで何か覚えていることを話してよ」とChip。
「そうだなぁ・・・そうそう、よく夕食どきになるとTaroが来たじゃない?」
「うんうん、食べようとすると突然来るんだよね」
「で『来る前に電話してくれれば、Taroの分も用意するからさ』って言ったんだよ。そしたらTaroが50フランもはたいて太った鱒を1匹買ってきたの、覚えてる?」
「あ〜そんなことがあったような気がする」
「僕の黒い鍋で鱒を料理したんだけど、僕とTaro以外誰も食べようとしないんだよ。なぜかと不思議に思ったら、昼間Chipがその鍋でTシャツを染めたからだって」
ここでふたりとも爆笑。「何で僕はKyoの鍋でTシャツ染めちゃったんだろう??」といいながら笑い過ぎで苦しそうなChip。「で、美味しかった?」
「なんか、変な味だった」また爆笑。
「他には、他には?」
「Kennetも変わってたよね」ケネットというのは当時のルームメートのスウェーデン人。
「物静かで、いつも台所で勉強してて、さすが国費留学生ってかんじだったよね」
「それが、ある日アパートに帰ったら台所のラジオから凄い音でオペラが鳴ってて、Kennetがテーブルに乗ってギターをかきむしりながらロックン・ロールを歌ってたんだよね!」当時は「なんだぁ、Kennetも同類じゃん」なんて気楽に思ったけど冷静に考えてみるとけっこう異常かも!? 彼はストックホルムのレコード屋でバイトしていたためか音楽に凄く詳しくて、この一件以来よく一緒に演奏するようになったのだった。
「いっぱい曲も作ったよねぇ」と懐かしむChip。
その他「貰ったうさぎ肉の脚をつかんだら、頭もついてて目と目が合っちゃった事件」「それをChipが窓から棄てた事件」や「パーティーで音楽やりすぎて警官が来ちゃったけどちょうどコンセルバトワールのコがヴァイオリンをしっとり弾いてたおかげで事なきを得た事件」、「目が覚めたら壁いっぱいに巨大ソフィー・マルソー(のポスター) 事件」の真相等について盛り上がる。こんなに笑ったのは久しぶり。たわいないことばかりだけど、想い出話がこんなに楽しいなんて歳をとった証拠かも。
「ところでここは僕に払わさせてね」
「いやいや、僕が」とChip。
「何言ってんの、飛行機代まで使わせちゃって!飛行機代も払わせてよ」
「いいんだよ、そんなの!僕が来たかったんだから」と笑うChip。何だかとても嬉しい。
「じゃあなおさらここは僕!」なんと今回の旅で食事代を自分で払うのは初めて。ちょうどよいチップの額などChipに教えてもらって支払いを済ませ、いよいよカジノへ。わびすけを見送ってから
ブラックジャックの卓へ。初めてのディーラーを相手にしたブラックジャックなのでやや緊張するも、Chipのおかげで楽しく遊ぶことができた。
「ディーラーの手はすごく弱いからきっとバーストするよ」とかダブルダウンのタイミング等適切にアドバイスしてくれる。
ゲーム中Chipがやっているバンド"manCHILD"のもうひとりのメンバーPeytonと出会った。彼はちょうどこのホテルの向いのHarrah'sに泊まっていて、Chipも今晩そこに泊まるそうだ。Peytonも友人達と一緒だったのでゆっくり話はできなかったのが残念、次の機会があるといいのだけど。
気をとりなおしてゲーム再開。ときどきChipは「いい予感がする!」と言って掛け金を増やして、勝ったり負けたりした。僕はひたすら手堅くちびちび行く。結果は元手を除いて150ドルのプラス。非常に小さいけど楽しかったので大満足。ふたりで分ける。
その後Chipが部屋まで送ってくれ、明朝NABへ行く約束をして別れた。
註1: | 正確な統計データはないのでお叱りを受けるかもしれないけれど,フランス人の平均身長はヨーロッパでもかなり低い方だろう.その原因はカフェオレとパンだけの朝食にあるのに違いないと個人的には思うんだけど,如何なものか? |
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